インフラ・ユーティリティ産業支援のプロとして既存の枠にとらわれず、本質を見極めることで、持続可能な社会の実現をめざす。
インフラ・ユーティリティ産業支援のプロとして
既存の枠にとらわれず、本質を見極めることで、持続可能な社会の実現をめざす。
三菱UFJ銀行
鈴木田 慶悟
仙台支店 営業第一部 取引先第二課
2017年入行/法律学部法律学科卒
入行5年目に行内の公募制度「Position Challenge」を活用し、仙台支店でインフラ・ユーティリティ産業を支える大企業営業に挑戦する。国内外のエネルギー事情を俯瞰しながら、持続可能な社会の実現やエネルギーの安定供給に貢献すべく日々奮闘している。
厳しい交渉も行いながら、お客さまと本気で向き合う
学生時代はアメフト部に所属し、学生日本一をめざして日々練習に励んでいました。アメフトは「準備のスポーツ」と言われるほど、緻密な戦略やトレーニングなどの事前準備が勝敗を左右するスポーツです。自分たちに必要なものは何かを常に考え、そのための練習を積み重ねた結果、関東リーグでトップの成績を収めることができました。目標としていた学生日本一には届きませんでしたが、仲間と共に自分の限界に挑戦する中で、目的としていた「価値ある人間形成」に向け、心身共に成長することができました。4年間で鍛えた精神力や思考力は、現在の業務に活かされていると感じます。
就職活動では、「人間力で勝負できる仕事に就きたい」と考え、無形商材を扱う業界を検討していました。中でも金融業界は、あらゆるビジネスを根幹で支えており、金融グループとして圧倒的な総合力を誇るMUFGなら、幅広くさまざまな領域に携われると思い志望しました。
入行後、最初の2年間は、支店の法人営業として老舗の呉服店や和菓子店などの伝統産業を担当しました。この業界では業績不振のお客さまも多く、決算書や事業計画書を分析しながら、お客さまと共に事業の立て直しに取り組みました。お客さまの視点で本当に必要なことは何かを考え、時にはお客さまの要望とは異なる厳しい交渉も行いました。この経験から、自分の立場やお客さまとの関係性にとらわれず、問題の本質を見極め、お客さま自身も気づいていない真のニーズに応えることが必要だと実感しました。営業として「お客さまと本気で向き合う」とはどういうことかを学んだ2年間でした。
自分の軸となる「創造性」と「妥協のない姿勢」を学ぶ
入行3年目から営業本部に異動し、小売・サービス業の大企業担当を経験しました。この部署では、担当するお客さまに対しコーポレートファイナンスやグローバル商流などの提案を行いました。その中で、単に営業目標を意識するだけでなく、お客さまと新規事業を協働創出することによりMUFGの企業価値を高めていくこともミッションの一つだと意識するようになりました。きっかけとなったのは、ある先輩行員との出会いです。その先輩は、常に「お客さまの想像を超える提案をすることで、もっとおもしろいことができないか」という発想を持っていました。お客さまから「新たな決済商品の開発をしたい」とご相談を受けたときには、MUFGの既存の決済商品を組み替えることで法人向け新規商品をリリースすることができました。リリースされた商品は、行内でも評価され新たな実績となりました。先輩と一緒に働く中で、仕事に対する前向きな姿勢を学ぶと同時に、お客さまと向き合う際には「新しい価値を生み出せないか」という発想を自然と持てるようになりました。
営業本部には、私が影響を受けた先輩がもう一人います。前述の先輩とはタイプが異なり、こちらの先輩は自身の目標やタスクを確実に遂行する力が突出していました。例えば、お客さまへの提案書をチェックしてもらった際、「こういう場合はどうする?」と先輩から自身の想定外のパターンを聞かれ、自分の準備が不十分であることに気づかされました。先輩は、提案の中身にとどまらず、提案するタイミングやアプローチの仕方など、仕事の一つひとつを単純なタスクとして捉えるのではなく、本質がどこにあるのかを突き詰め、思考を深めていきます。そうすることで、お客さま自身も気づいていない本質にたどり着くことができ、あらゆるケースを「想定内」として対処できることを学びました。先輩方からプロとしてのあり方を学べたことは自分にとっての財産であり、ここで身につけたクリエイティブな思考や妥協のない姿勢は、営業としての自分の軸になりました。
この冬の電力不足に対応できずに、この先、何ができるのか
営業本部で経験を積む中で、「大企業営業としての専門性を高めたい」と考えていたところ、入行5年目に「Position Challenge」という行内制度に登用されました。この制度は、若手がより裁量や権限のある職務に挑戦できるもので、現在は、仙台支店でインフラ・ユーティリティ産業を中心に、東北エリアの大企業や、国立大学法人のお客さまを担当しています。
インフラ・ユーティリティ産業は、暮らしの基盤となる重要な産業です。世界のエネルギー事情も俯瞰するなど、これまで以上に広い視野を持ちながら、最適なソリューションを考え続ける姿勢が求められます。特にそれを実感したのが、2022年の電力発電事業者であるお客さまに対する大型融資案件です。その年の冬、東日本では電力需給が逼迫していました。このままでは東日本全体が停電する恐れもある中、お客さまから、高騰する燃料の調達費など、石炭火力発電のための融資の相談を受けました。カーボンニュートラルを金融面でコミットしていく当行のポリシーから考えても、石炭火力発電に係る融資採り上げは、高いハードルのある案件でした。
そのとき、私の背中を押してくれたのが「もっと高い視座で、シンプルに考えるといい」という上司からのアドバイスでした。そこで改めて、既存のルールや枠組みにとらわれず、物事の本質を考え続けました。MUFGとして、将来的なカーボンニュートラルに向けたコミットはもちろん大事です。しかし、この冬の電力需給を踏まえた支援もできない私たちに、この先、何を託してもらえるのか。そう考えたとき、自分のすべきことが見えてきました。
MUFGから日本、さらには世界へ。新たな制度設計に貢献したい
まずは、行内で融資採り上げに向け論点となっているルールがどのような背景・経緯で策定されているのかを一つひとつ整理していきました。なぜそういった規定になっているのか、根拠となる理由は何かを探りながら、本質的な問題を追求していきました。行内のルールだけで判断するのではなく、日本全体や世界のルール、さらには国際競争力という観点から適切かどうかも考えました。
また、行内の同意を得るべく、経営企画やIR、審査、役員など、総勢40人ほどの関係者と、朝夕30分のミーティングを毎日2週間ほど続けました。私たち営業は、電力需給の状況やお客さまの立場を誰よりも理解している存在です。お客さまの視点に立ち、融資の必要性・MUFGとしての姿勢などについて一つひとつ言葉を尽くして説明し続けた結果、最終的に行内の合意を得ることができました。本当に必要なことは何か、物事の本質を掘り下げたことで、組織の制度を考え直し、より良いものへアップデートしていくことのきっかけをつくることができました。
世の中が脱炭素社会に向けて動いている今、インフラ・ユーティリティ産業は世間の注目度が高い一方、業界に対する理解はまだ十分とは言えません。電力不足を例に挙げても、昨今の燃料費高騰や再生可能エネルギー活用への動きなど、さまざまな社会課題が関連しています。エネルギーを安定供給するためには、まだ石炭火力発電に頼らざるを得ない状況もあり、これらの情報を発信することで社会の理解を得ることも金融機関としての重要な役割だと実感しています。
今後は、世界各国のエネルギー事情や日本特有の国土事情、地政学など、多角的な視点から専門知識を深め、より良い金融支援の制度設計に寄与したいと考えています。まずはMUFGの中からスタートし、いずれは省庁や世界に対しても新たな制度設計を提案しながら、インフラ・ユーティリティ産業のプロとして、金融業界から持続可能な社会の実現やエネルギーの安定供給に貢献したいと思います。難題に遭遇したときこそ、シンプルに考え、問題の本質に立ち返ることで、既存の枠組みを突破し、より良い制度づくりに貢献していきたいです。