設計から量産化まで、若手が担当。ものづくりの醍醐味が、ここにある。
このストーリーのポイント
- 最初から最後まで自分の手でつくることにこだわり、マキタを選ぶ
- 専攻は違っても、基礎から学べる風土のおかげで不安はなくなった
- 入社4年目で主担当になり、新製品開発を成功させる
ものづくりの手応えを味わいたくて、電動工具の設計を志望。機械の知見はなかったが、基礎から学ぶことができた。入社4年目に主担当となり、ハンマドリルの新製品開発にチャレンジ。実践を通じて若手技術者の成長を促すのが、マキタの大きな魅力だ。
-profile-
T.H
株式会社マキタ
第2開発部
2015年入社/マテリアル理工学専攻修了
愛知県出身。学生時代に打ち込んだバスケットボールは、今も会社の部活動、社会人サークルで続けている。“人”の魅力に惹かれてマキタに入社し、現在に至るまで第2開発部で製品開発に携わる。
“自分がつくった”という実感を求めて
学生時代の専攻は材料工学でした。特に金属の表面処理について学び、酸化皮膜による防蝕効果の研究を続けました。一つのテーマについてとことん突き詰めていくことは、自分に向いていると感じています。
一方、学部時代から院を修了するまで続けたのがバスケットサークル。バスケットそのものは中学時代から続けており、今も会社の部活動などで汗を流しています。攻撃が好きというプレーヤーが多いのですが、私の場合はディフェンスが好きなんです。自分を追い込むように地道な努力を重ね、守備力に磨きをかけました。そんなストイックさは私の持ち味。研究活動にも通じるかもしれません。
学生時代は根を詰めて研究活動に打ち込んだので、社会人になったら研究職ではなく、開発職として仕事をしたいと考えました。そこで“軸”としたのが、ものづくりに携われるメーカーです。
愛知県ですから、当然、自動車関連メーカーも多いのですが、自動車の場合、分業が進んでいるので、“自分でつくった”という実感が得にくいのではと考えました。そこで志望したのがマキタ。電動工具なら、最初から最後まで1人で開発を担当できるので、きっと自分が開発したという実感が得られるに違いないと思ったのです。
入社の決め手となったのは、“人”の魅力です。先輩技術者に話を聞くと、穏やかで、仲間を大切にする人柄が伝わってきて、自分もこういう人たちと一緒に働きたいと思いました。とてもフレンドリーで、学生の私がどんな質問をしても丁寧に教えてくれ、そして自分の仕事に対して大きな誇りを持っていることが伝わってきたのです。その姿に、私は自分の将来像を重ねていました。
マキタと言えば、地元で知らない人がいない会社で、知名度は抜群です。家族も私の就職を喜んでくれたことは、言うまでもありません。
人を大切にする風土が心地よい
電動工具の魅力は、建設現場や工事現場など、街のさまざまなシーンで実際に使われている様子を目にできる点です。社会にとって非常に身近で、欠かすことのできない存在なのです。プライベートでも工事現場などに遭遇すると、つい立ち止まって作業の様子に見入って、マキタ製品が使われていないか、目をこらすことがよくあります。
入社して担当することになったのは、ハンマドリルです。ハンマドリルとは、ハンマーのような打撃とドリルの回転力を組み合わせた電動工具で、コンクリートの穴開けなどに使われます。もちろん私は入社するまでその存在すら知りませんでした。担当することになって初めて自分の手でハンマドリルを持ち、実際に穴開け作業を経験してみたのですが、そのパワーのすごさに圧倒されました。小さくてもこんなに大きなパワーを発揮するハンマドリル。その開発に自分が携われるということに、とてもワクワクしたのを覚えています。
とはいえ、私の専攻は材料工学でしたから、機械に関する知見はほぼゼロでした。同期に後れを取るのではないかという不安があったことは否定できません。しかし当社は若い人財の育成には特に力を入れており、研修が充実していたおかげで、そうした不安は杞憂に終わりました。特に1年目は3D CADの使い方を含め、基礎の基礎から徹底的に教わることができました。
一方で、機械に関しての先入観がないことから、自由な発想で取り組むことができたのは自分のアドバンテージだと思っています。若手技術者を中心に新製品開発につながるアイデアを発表する機会があったのですが、私も臆することなく発表できました。自由に発言できる風土は、当社の魅力の一つです。
今でも思い出すのは、新婚旅行に出発する直前になって私の担当する製品にトラブルが発生したときのことです。まさか新婚旅行を中止するわけにもいかず、真っ青になっていたところ、先輩や同僚が「対応しておくから気にしないで楽しんできて」と言ってくれたのです。
社員が常に支え合い、いざというときには自分の仕事を後回しにしても助け合う、そんな風土は、入社前に感じた“人”についての魅力の表れです。自分の選択は間違っていなかったと確信しました。
もちろん新婚旅行では、みんなへのお礼の気持ちを込めて、たくさんのお土産を買って帰りました。
開発中のトラブル対応で中国の工場へ飛ぶ
初めて主担当として製品開発を任されたのは、入社4年目のことでした。それまでは先輩の仕事を手伝う形での仕事が多かったのですが、上司に呼ばれて「そろそろ主担当をやってみるか」と言われたときは、喜び半分、プレッシャー半分でした。
若手の育成に力を入れている当社では、研修の充実もさることながら、実践を通じて育てていくことを大切にしています。4、5年目で主担当を任されるのもそのためで、量産化まで1人で担当することができます。私が担当することになったのは、40Vmaxハンマドリル。それまでサブとして担当してきた製品より1クラス上のグレードの製品です。私にとって設計者として大きな一歩を踏み出すための、意義あるチャレンジでした。
試行錯誤を繰り返しつつ設計を進め、シミュレーションを繰り返し、試作機を作り込んでいきました。試作機が完成したときは、上司にお願いして試験室で使ってもらったのですが「なかなかいいじゃないか」という言葉をいただき、たいへん嬉しかったです。また、営業担当者に新製品をお披露目する会議でも、みんなの熱い視線を浴び、大きな期待を感じました。このまま量産化も成功させ、絶対に納期に間に合わせてみせると、決意を新たにしたものでした。
ところがここで大きな壁にぶつかってしまいました。量産化直前に、想定外の不具合が発生したのです。製造工場は、中国。納期に遅れることは許されませんから、私はすぐに中国に飛ぶことを決心し、上司にその旨、申し出ました。上司はそんな私に快くOKを出してくれたのです。たった1人での出張でしたが、それだけ上司には信頼してもらっているのだと実感しました。
これが私にとって初の海外出張。中国の工場に出向いていき、責任者として不具合の原因究明のために手を尽くしました。先方の技術者も協力を惜しまず、おかげでなんとかトラブルを解決することができたのです。
その後は順調に量産化の段階に入り、納期にも間に合わせることができました。この製品は、そうした経緯もあったことで、とても思い入れ深いものとなりました。
世界に向かって、設計者として胸を張りたい
私が設計から量産までを担当した40Vmaxハンマドリルが市場に投入されたのは2019年11月。幸いなことに売上高は見込みを上回っているようで、設計者としてこの上ない喜びです。
もちろんどんな製品にも100%ということはありません。ユーザーの声に真摯に耳を傾け、競合他社の製品と比較しながら、バージョンアップさせていきたいと考えています。
設計者としての目標は「ハンマドリルなら彼」と誰からも認められるような存在になることです。そして、世界中で使われるようなハンマドリルをつくりあげたいと思います。世界のユーザーに向けて“このハンマドリルは私がつくったんだ”と胸を張れる、そんな製品づくりが夢ですね。そんな言葉が言えるのも、ものづくりに携わる醍醐味です。
将来については、管理職として技術者のマネジメントを担当するのか、ハンマドリル開発のスペシャリストとしての道を究めていくのかもまだ決めかねています。自分ではどちらに向いているか、はっきりしません。そのあたりの見極めも、これからの私の課題だと思います。
100年を超える、ものづくりの歴史を誇るマキタ。モーターからスタートした歩みは電動工具へと進み、今では家庭用クリーナー、園芸用品などのコンシューマ領域へと広がっています。このように自ら進む道を自ら切り開いてきたのがマキタだから、社員に対しても自らチャレンジする姿勢を求めています。学生時代の専攻は関係ありません。大切なのは、いつまでもチャレンジし続ける姿勢なのです。
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