趣味のロボット作りが夢を叶える!最優秀新人賞受賞、さらなる高みへ

趣味のロボット作りが夢を叶える!最優秀新人賞受賞、さらなる高みへ

趣味のロボット作りが夢を叶える!
最優秀新人賞受賞、さらなる高みへ

このストーリーのポイント

  • ロボットコンテストをきっかけに京都製作所に入社
  • 社内の「最優秀新人賞」受賞で成長
  • 工作機械だらけの部屋で、いまもロボットづくりを

大学時代は様々なロボコンへの参加が軸となるような生活を送る。その中のひとつ「キャチロボバトルコンテスト」という大会を通して京都製作所を知り、そのまま入社した矢部。2023年度の最優秀新人賞に輝き、いまエンジニアとしてさらなる高みを目指す。

PROFILE
株式会社京都製作所

矢部 隆

技術部 研究開発グループ 機械設計
2022年4月入社
立命館大学院 理工学研究科
機械システム専攻 ロボティクスコース修了

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新築の寮の部屋の大半を工作機械やアルミ材料が占領し、自分自身はロフトで寝ている状態。いまも趣味のロボットづくりを続けていて、それが仕事にも役立っている。現在は研究開発グループでアームユニットなどを開発中。

大会のメインスポンサーが京都製作所

高校までは「何となくものづくりが好き」という程度で、将来の夢も漠然としていました。それでも好きなことを学びたいと思い、大学は理工学部の機械科に進学。それから大学院を出るまでの6年は、ロボットづくり、ロボコンへの参加が中心となる生活になりました。NHKの大学ロボコンをはじめ様々な大会に挑戦し、ベスト8に進出したり、特別賞をいただいたりしたこともありました。

そのひとつが毎年、京都で開催される「キャチロボバトルコンテスト」です。大会名のとおり「キャッチ=掴む」という動きに特化したロボコンで、1年目は裏方の運営スタッフとして関わり、2年目からは選手としてエントリー。3年目からはチームの中心として参加しました。くちばしをパクパクさせる折り紙のようなハンド機構で挑戦したり、モーターの調整に苦労したことを、いまも鮮明に覚えています。

実はその大会の後援企業が京都製作所だったんです。大会後に展示場や工場などを見学させてもらい、手がけている機械にどんどん魅力を感じるようになりました。食品や医薬品などを包装したり、完成品をダンボールに詰めたりする機械を目の当たりにし、まず肉眼では追えないほどの処理スピードに度肝を抜かれました。さらに1台1台がオーターメイドだと知り、自分もこんな機械をつくってみたいと思うようになりました。

まさに「キャチロボバトルコンテスト」で将来の夢が明確になり、就職したい会社に出会ったというわけです。就活では他の会社にもエントリーしましたが、やはり「本当にやりたい仕事ができるのはここだ」と思い、入社を決めました。

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写真中央:矢部さん

自ら進んで社内の新人賞にエントリー

入社後、半年ほどは同期の仲間と一緒に全体研修です。そこで社会人としての基礎、京都製作所のつくる機械について、依頼から開発・納品・アフターサポートまでの流れなどをしっかり学ぶことができました。またこの研修では部品加工や組み立てなど機械づくりのあらゆる工程を体験でき、配属先の異なる同期と過ごす時間もたっぷりありました。その経験や人間関係がいまの仕事にもすごく役立っていますね。

全体研修が終了する秋には技術部・研究開発グループの配属となり、以降は部署内でのOJTとなります。仕事には厳しいですが、優しい先輩ばかり。「見て覚えろ」「技は盗め」的なことは一切なく、指導はとても丁寧で、何でも遠慮せずに質問できる環境です。ただ、実際に仕事として機械をつくるにあたり、最初は自分の知識の少なさに愕然としました。そして先輩方が豊富な知識を持ち、限られた予算や納期の中で次々に仕事をこなしていく姿に驚きました。大学でのロボットづくりにも予算や期限はありましたが、責任感や段取りの仕方はまったく別物。もう尊敬できる人ばかりです。

そんな先輩の一人から社内新人賞の話を聞き、とても興味を惹かれたので自分もぜひ応募しようと思いました。新人賞は入社2〜4年目の社員、約100人全員に参加資格があり、「新人の日常の努力に対して会社として何かできないか」という発想から生まれた賞です。実務での成果を発表するというより、「仕事のために、将来のために取り組んだこと」をプレゼンする自由研究的なもので、特に課題も決められていません。技術や営業など全部門の新人が参加し、中にはゴルフをテーマに発表をしている営業の同期もいましたね。

私は、日ごろ趣味としてやっているロボット・メカづくりを通して機械要素を学習するという内容で挑みました。具体的には「4節リンク機構・スライダリンク機構」を自分で設計・製作したんです。もちろん機械づくりそのものが目的ではありません。学問的に知っているつもり・理解しているつもりでも、そこには必ず不足や偏りがある。でも誰かがつくった機械を見る・触るだけでは、何が足りないか、どう偏っているかが分からない。いざ仕事で機械をつくるとなったとき、実際に必要な知識を深堀りし、実際に役立つ視点を養うための自己研鑽の方法はないか。そんな発想で取り組んだテーマです。

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ドキドキのプレゼンから驚きの最優秀新人賞受賞

簡単な機構でも自分の手で製作すれば、途中で多くの不具合に出くわすことになります。その経験により、実務でトラブルを予見する直感力を養える。優れた機構に必要な要件や計算すべきパラメータを素早く導き出す感覚を磨ける。設計した部品を実際に加工できるかどうかを判断する力も身につく。そう考えて、まずはシミュレーションや手計算でリンク機構の軌跡を作図しました。それをもとにFusion360を用いて、部品図・3D組図・加工データを作成。CNCで基本加工を行い、旋盤・フライス盤で仕上げ加工をして機構を完成させました。

部品のはめ合いや同軸度を詰める過程では、部品の加工精度・組立精度、軸受や潤滑がメカの動作効率に大きく影響することなどを学びました。カム曲線設計では、避けるべき形状(急な加減速や圧力角など)を身をもって体験できました。

こうした取り組みの目的、製作過程、得られた成果などをまとめた資料で、100人から10数人に絞られる1次の書類審査を通過。管理職の前でプレゼンを行う2次審査もなんとか突破し、最後の5〜6人に残りました。次はいよいよ会長・社長・役員も出席する場での最終プレゼン審査です。そこで初めて他の応募者の発表を見たんですが、レベルの高さ、スライドの出来栄え、プレゼンの上手さに圧倒されました。途中で自信をなくしかけましたが、逆にそれで開き直れましたね。完璧な発表でなくてもいい。自分が好きで打ち込んだテーマを、自分なりに一生懸命伝えよう。そう腹をくくって壇上に上がりました。

結果、なんと最優秀賞に!まったく自信がなく、予想もしていなかったので、名前を呼ばれても即座に反応できないほどでした。会場の拍手の音でじわじわと喜びが湧き、賞金と副賞の海外展示会参加・海外旅行の目録を手にして、ようやく我に返った感じです。ただ、製作した機構の現物を手に取ってもらい、自分の言葉で伝え切ったという実感はありました。それで取り組みへの努力や姿勢、思いが届いたんだと思います。

いま実務の中では、段取りの悪さが自分の課題です。先輩方が限られた時間の中で成功裡にスケジュールを遂行していけるのは、最初に全体を見通して段取りを組んでいるからこそ。まだまだ先輩に追いつけそうにはありませんが、今回の新人賞の取り組みで、設計・製作を一通り経験し、少しは「段取り力」も身についたのではと思っています。

今後は興味を惹かれるメカだけでなく、他の技術にも積極的に触れて幅広い知識を身につけ、しっかり工程管理のできる技術者を目指していきます。さらに将来は自分独自の新技術を生み出したいとも思っています。例えばこれまで製造ラインでの製品の移動にはコンベアが用いられてきましたが、京都製作所ではリニアで行うことに成功しています。こんなふうに自分の考えた技術が、会社のつくる機械に影響を与えるようになればと思っています。若手もアイデアを出しやすく、自分で考えてやってみることを推奨する社風ですから、不可能ではないはずです。

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いまも趣味のロボットづくりを続けています

就職してからも趣味でロボットづくりを続けています。自分が設計したものがちゃんと動く。ダメなら問題点を改善して動くようにする。そのプロセスが好きなんです。新築の寮の部屋はけっこう広くてキレイなんですが、床は工作用のボール盤やフライス盤、安いときに買ってストックしているアルミ材料などであふれ、ロフトで寝起きしている状態(笑)。ちょっと不自由ではありますが、最優秀新人賞を受賞できたのも、こうした「自前の工房」があったからこそです。

もちろん、個人的にロボコンなどにも参加しています。中でも力を入れているのが、神奈川県で行われる「かわさきロボット競技大会(通称:かわロボ)」。なかなか川崎の本大会には出場できませんが、石川県の姉妹大会「のとロボット競技輪島大会」や、京都の大学で行われる練習試合(通称:野良試合)に挑んだりしています。競技は相手を倒したり、エリア外に押し出したりするバトルロボット。勝ち負けよりも、自分が好きでつくったロボットを自分で動かすことが楽しいんです。

こうした大会を通じて得られるものも少なくありません。いつも出場者同士で「ここはどんな機構?」「この動きはどうやって制御してるの?」と話が盛り上がって、そこから新しい知識やヒントをもらうことも多いんです。さらに同じ機械関係の技術者や車関係の技術者など、いろんな人と知り合えるのも魅力。実際、京都製作所が部品を発注している会社の人とも仲良くなり、いまは歯車の相談に乗ってもらえるような関係です。そういう意味では趣味が仕事に大いに活きています。あ、仕事が趣味に役立っている、ともいえますけどね(笑)。

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写真右:矢部さん


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