次世代のエネルギー“水素”を活用してカーボンニュートラル実現を目指す
次世代のエネルギー“水素”を活用して
カーボンニュートラル実現を目指す
このストーリーのポイント
- カーボンニュートラル実現に向けて、環境にやさしい水素エネルギーの普及に尽力
- 自分の裁量で仕事を進めていける楽しさとやりがいがある
- 施工管理現場で培ったコミュニケーション力が、新規事業成功の鍵を握る
みらいビジネス推進本部にて、水素をエネルギーとして活用するための実証事業に従事。前例がない分手探りでミッションを進めなければならない難しさを感じながらも、協力会社と二人三脚で取り組んでいる。
株式会社ミライト・ワン
西口 清佳
みらいビジネス推進部
2007年入社
経済学部卒。大学時代にアフリカの経済学を勉強したことをきっかけに、アフリカなどの世界で通信インフラを展開しているミライト・ワンに関心を持ち、入社。入社後は施工管理担当として、光通信ケーブル回線の接続や、通信キャリアの基地局の建設事業に携わる。産休・育休を経て復帰後、現職。
次世代のエネルギーとして注目が集まる水素の可能性
ミライト・ワンの新規事業を行う「みらいビジネス推進本部」に所属して、カーボンニュートラルの実現に向けて、水素を次世代のエネルギーとして活用するための事業を進めています。大阪府が2025年の大阪・関西万博に向けて、カーボンニュートラルを促進する技術開発に取り組む企業を後押しするプログラムを公募していて、応募したところ採択が決まったため、補助金をいただきながら実証事業に取り組んでいます。
具体的に開発実証を行っているのは、水素充填システムです。水素をエネルギーとして使うには、酸素と結びつけて電気や熱を作り、容器に充填するシステムが必要です。しかし、日本国内にはまだそのシステムが整備されていません。水素をエネルギーとして活用したい企業様のニーズに応えるために、充填システムを全国に配置することで供給網を拡大できるよう事業を進めています。
供給網が発達すれば、大きく2種類の使い道が生まれると予想しています。1つはドローンや、自転車などのマイクロモビリティ(自動車より小さく、手軽に移動に使える乗りもの)の動力源としてです。水素エネルギーを使えば、電気を使う場合に比べて飛行、走行距離が長くなるメリットがあります。
特に、ドローンと水素エネルギーが掛け合わさると、非常事態が起こった時の状況調査や物資輸送などの用途でドローンを長時間飛ばせるようになるため、社会インフラとしての活用が進むと期待されています。実際に当社でも、充填システムとはまた別に、水素燃料電池で動くドローンの機体開発に取り組んでいるところです。
もう1つは、非常用電源としてです。たとえば、データセンターや携帯通信基地局で水素エネルギーを活用できるようになれば、災害が起こって電気がストップしても基地の稼働が止まることはありません。また、工事現場でよく使われるガソリン発電機の代替機としても注目されています。CO2の発生が抑えられるうえ、音も静かで、夜間や人の集まる場所で工事をしていても迷惑がかかりにくいのが利点です。
私は、冒頭で話した大阪府のプログラムに関わる一連の業務を担当しています。これまでに経験した業務の流れとしては、まず大阪府へ提出する申請書類を作成。書類審査が通ったら、事業を採択してもらうためのプレゼン資料を準備して、発表を行います。
採択が決まったら、充填システムの具体的な仕様を詰めていき、仕様が固まったら、その後の設計図の作成や開発業務に関しては、協力会社にバトンタッチします。仕様に沿って作ってもらえるよう具体的に指示を出したり、進捗の確認を行うのも私の仕事です。
進捗管理のほかに並行して進めているのが、「高圧ガス保安法」に則った申請業務です。そもそも、水素を容器へ充填するには圧力をかける必要があります。日本では、1MPa以上の圧力をかけると「高圧」に該当するため、安全を担保するため保安協会に製造、使用の許可を申請するよう定められているんです。今開発を進めている容器に水素を充填しようとすると、圧力が1MPaを超えてしまうので、保安協会に許可をもらうための書類の作成や申請も担当しています。
自分の裁量で仕事を進めていける楽しさ
この仕事に取り組んでいて難しさを感じるのは「わからないことがあっても、社内に聞ける人がいない」ことです。水素エネルギー事業に関わっているメンバーはいるものの、全員私とほぼ同じタイミングで部署に配属になっており、社内に長年の経験を踏まえた知識を持つ人がいません。そもそも、水素の充填システムを作ること自体、日本国内では先進的な取り組みなので、手探りで情報を集めていくしかないのです。
頼れる人がいない中、事業を前に進めるために意識しているのは、一緒に仕事をしている協力会社の方々から情報を集めることです。協力会社には、水素エネルギーの充填容器はこのメーカーの方、設備に関してはこの企業の方など、部分的な知識を持っている担当者がいらっしゃいます。皆さんに色々と教えてもらいながら、自分自身でも調べつつ業務を進めていく姿勢を大切にしています。
そのため、この仕事は協力会社の方と円滑にコミュニケーションをはかる力が求められます。基本的なことではありますが、たとえば私が間違った指示を出していたら、相手に素直に謝る。逆に、相手が何かミスをしていても、それを責めずにフォローしていきます。お互い前例のない難しい取り組みにチャレンジしているという前提を忘れずに、相手を尊重しながら対話を重ねています。
こうやって話すと、ずいぶん厳しい環境で仕事をしていると感じるかもしれません。ですが、私は自らの判断で行動を起こせるこの仕事が楽しいのです。社内の指示通りに動くのではなく、自分の裁量で仕事を進めていけることに、この上ないやりがいを感じています。
施工管理時代に培った調整力とコミュニケーション力
大学時代は経済学を専攻していて、途上国であるアフリカの経済事情について学んでいました。ケニアの大学に留学したこともあります。スワヒリ語を学んだり、広大な自然の中で動物と触れ合ったりする毎日は新鮮でしたね。日本とはまた違った文化や価値観に触れられて、視野を広げることができた貴重な体験でした。
そんな経験から、将来はアフリカなどの海外で仕事ができる会社に就職したいと思っていました。そこで当社が、当時アフリカや東南アジアに通信インフラを展開していたことに関心を持って、入社を決めたんです。
しかし内定後に決まった職種は、予想外の技術職。文系出身だったので驚きましたが、任せられたからには全力で取り組もうと気持ちを新たにしました。
入社後は、工事現場の施工管理担当として、光通信ケーブル回線の接続や、通信キャリアの基地局の建設事業に関わっていました。メインとなる業務はスケジュール管理です。工期までに無事工事が終えられるよう、スケジュールを引きながら案件を進めていきました。現場にもしばしば足を運んで、工事が円滑に進むよう作業員の方々に指示をしたり、進捗状況や安全面の確認をしたり。ヘルメットと作業着姿で汗を流しながら働いていました。
工事現場での仕事は、学びが非常に多かったです。現地では様々な施工会社の方と顔を合わせます。皆さん技術力、施工力の高いベテランの方々ばかり。私は作業を指示する立場ではあったものの、逆に工事に関連する知識を教えていただいたこともありました。わからないことを素直に教えてもらう姿勢を大事にしていると、相手にも良い印象を持ってもらえて、会話が弾みます。やがて現場の方々との信頼関係が生まれて、工事の完了まで一致団結しながら仕事を進めていける瞬間が、施工管理に携わるうえでの一番の醍醐味でした。
この時に培ったスケジュール管理能力や、信頼関係を築くためのコミュニケーション力は、今の仕事でも大いに活かせています。一生懸命仕事に向き合ってきた過去の自分が、今の自分を支えていることを実感しています。
法律の改革も視野に入れて水素エネルギーの普及を目指す
私は二児の母であり、育児休業から復帰したタイミングで、この水素エネルギー事業に関わり始めました。育児と仕事を両立しながら働くうえで、大変なことは本当に多いです。たとえば、子どもが風邪で保育園を休まなければいけない時、私自身が仕事を休むのが難しいことがあります。プロジェクトの担当者は私だけで、代わりに仕事を頼める人がいないからです。
ここで本当にありがたく感じているのは、当社の在宅勤務制度です。在宅勤務であれば、子どもの様子を見ながら仕事を進めることができます。出社にかかる時間がなくなり、その分を仕事にあてられるのも助かってますね。会社がフレキシブルな働き方を認めてくれているからこそ、子育てと仕事を両立できています。
水素エネルギー事業に携わるうえで、将来的に実現していきたいのは「高圧ガス保安法の規制を緩和する」こと。日本は、高圧ガス保安法が世界の中でもトップクラスで厳しいです。先ほども話したように、日本は1MPa以上を高圧と定義しているのに対して、海外によっては30MPa以上を高圧と定めている国もあります。もちろん安全を担保するのは悪いことではありませんが、日本の定めている規制が足かせになって、水素エネルギーの普及が難しくなっているのも現状です。
少しでも現行の基準が緩和されるよう、同じ水素ビジネスを展開する企業が集まる講演会で呼びかけをしたり、ミライト・ワンが所属しているJH2A(水素バリューチェーン推進協議会)を通して、経済産業省に要望を出したりして動いています。環境にやさしい次世代のエネルギーを世の中に届けられるよう、今後もよりいっそう事業の推進に力を入れていきます。